相田潤, 斉藤雅茂, 花里真道, 斎藤民, 菖蒲川由郷, 平井寛, 小坂健, 尾島俊之, 近藤克則

第29回日本疫学会学術総会(東京都・千代田区),2019年1月

学会抄録集より

背景

社会的孤立は我々の生活や健康に影響を及ぼす。英国では2018年に孤独担当大臣が任命されるなど注目が集まっている。今後人口の多い都市部でも高齢化が進展していく。しかし都市での孤立が郊外よりも健康上大きな問題であるかどうかは検討されていない。

目的

本研究では孤立が高齢者の死亡に与える影響が都市で郊外より高いかどうかを検討した。

方法

多地域で実施されている日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study)の2010年調査をベースラインとして2016年まで追跡したコホート研究を行った。42517人(男性21041人、女性41200人)のデータを解析した。都市度の指標として人口密度を用いた。社会的孤立の指標は先行研究に準じ、婚姻していない、子ども、その他の親戚や家族、友人との関係性が少ないこと、地域組織への社会参加が無いこと(町内会、老人会どちらにも参加がない)を用い、0から5点の得点で用いた(点数が高い方が孤立)。共変量として年齢、性別、教育歴、うつ、既往歴(がん、心疾患、脳卒中、呼吸器疾患)を用いた。保健行動は社会的孤立と死亡の間の仲介変数と考え投入しなかった。Cox の比例ハザード解析で死亡のハザード比を計算した。

結果

解析対象者の平均年齢は73.5歳(SD=5.9)で、観察期間中に11.4% が死亡していた。社会的孤立をしている人ほど死亡率が高い傾向にあった。多変量調整Cox の比例ハザード解析の結果、人口密度が高いほど死亡のハザード比が有意に低く(HR=0.99、p<0.001)、孤立しているほどハザード比が有意に高かった(HR=1.11、p<0.001)。都市度(人口密度)と社会的孤立得点の間には有意な交互作用が認められ(p=0.007)、人口密度が高い地域ほど社会的孤立の影響が強かった

結論

高齢者の社会的孤立が死亡のリスクを高め、その影響は都市の方が郊外よりも大きかった。都市部の高齢者に社会参加の機会が増える環境づくりなどの対策が必要であろう。