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 道路は、自動車や自転車、人間が移動(通行)する場である一方で、人が街に出るときに最初に出会う、最も使う機会の多い公共空間でもあります。歩きやすいウォーカブルなまちを目指すには、道路のあり方が大切になりますが、本来道路が担う、快適な「移動」(リンク)の機能だけでなく、ちょっと休んだり、佇んだり、交流したりする、時には目的地にもなるような、「滞留」(プレイス)としての機能も併せて意識する必要があります。同時に、この両者が邪魔しあうことのないような適切な道路空間(道路断面)を設けることが、外出機会や使用機会を高めたり、そとで過ごしたくなる都市空間を生み出すことにつながります。

Link and Place 理論:イギリスの「Link and Place」という考え方では、都市における道路の位置づけ(広域ネットワークから地域街路まで)について、特に、それぞれのみちが、Link(通行・広域交通)から、Place(地域に寄与する活動空間)に至るまでのどこに属するかについて議論されている*¹
(出典:出口ほか*²)
日本大通り歩道部分:日本大通り(幅員36m)は、イチョウ並木の植栽帯を中心として両側に歩行者空間を設けた広い歩道(片側13.5m)が用意されており、その片側にオープンカフェが設置されていたり、腰かけられる柵があるなど、通行空間と滞留空間の両立した街路となっている(横浜市中区)
元町ストリートミュージカル:通行空間の部分でも、時限的に人々が集まる魅力的な公共空間として利用されることもある(横浜市中区)
みなとみらい地区を横に貫通する歩行者の通行空間と、水辺や芝生、木陰のスペースなど、佇んだりイベントに利用したりする滞留空間がほどよく配置されるグランモール公園 (横浜市西区)
池袋4公園を核としたまちづくり:池袋の市街地の中に、豊かな複数の公園が配置され、これらの公共空間同士を結びつけるネットワークを構築することで、多様で豊かな居場所を移動しながら利用することができる (出典: 豊島区*³)
IKE・SUNPARK イケ・サンパーク(豊島区):池袋の市街地には、それぞれの場所や使い方に応じた公園が配されており、公共交通(IKEBUS)により公園同士がネットワーク上に位置づけられている
つくば霞ヶ浦りんりんロードの「旧筑波鉄道コース」には旧駅舎を活用した休憩所が設置されている

コラム

通行にも滞留にも寄与する歩道空間の断面構造
 アメリカの交通関係者の組織、NACTO(全米交通計画官協会)では、道路断面、特に歩道断面を、通行空間(Pedestrian/ Throughway Zone)と滞留空間(Furnishing/Curb Zone:ベンチがあったり、植栽があったり、時には屋台を出したりなどすることのできる空間)に整理することが示されています*³。また、お店からのにじみだしができるような店舗前空間(Frontage Zone)が設けられることもあります。一方で、「シェアドスペース」と呼ばれる、あえて道路の断面を分断せずに、同じ空間を共有しながら交通静穏化(自動車のスピードの低減)を図るやり方もあります。
Urban Street Design Guide (出典: National Association of City Transportation Officials*⁴)

参考文献

*1 Jones, P., Marshall, S., & Boujenko, N. (2008). Creating more people-friendly urban streets through ‘link and place’street planning and design. IATSS research, 32(1), 14-25.
*2 出口敦・三浦詩乃・中野卓編著,中村文彦・野原卓ほか.(2019).『ストリートデザイン・マネジメント:公共空間を活用する制度・組織・プロセス』. 学芸出版社.96-98
*3 豊島区.「国際アート・カルチャー都市構想実現戦略」.
*4 National Association of City Transportation Officials. (2013). Urban Street Design Guide.