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身体活動の低下を原因とする肥満や慢性疾患が世界的に問題となるなか、身体活動を促進する手段として都市環境を改善する「まちづくり」に期待が集まっている。そして、都市環境と身体活動との関係を裏付ける研究も1990年代以降蓄積されている。こうした研究蓄積と計画実務をつなぐため、諸外国では身体活動促進の観点からまちづくりのデザインガイドが作成され、自治体等に参照されている。しかし、これらを歴史的・文化的背景や、街区構成、交通手段分担率などの異なる日本の都市に適用することは妥当でない。そこで、日本の都市における身体活動の促進・阻害要因を踏まえ、身体活動を促すまちづくりを普及するためにこのデザインガイドを作成した。

本書では、身体活動を促すまちづくりの考え方を、34のキーワードを通じて図や写真とともに紹介している。各キーワードは、

歩⾏者志向のデザイン (Design)
⼟地利⽤等の多様性 (Diversity)
目的地へのアクセス性 (Destination accessibility)
安全性等の魅力創出 (Desirability)
プレイス・メイキング (Placemaking)
ソフト面での促進活動 (Promotion)

という4つの”D”と2つの”P”の下に整理した。その前段には理論的背景として、都市計画、都市デザイン、予防医学の専門家による4編の論考を掲載した。また、巻末のケーススタディでは、全国の先進的な事例とキーワードとの関係を示した。

高齢化や健康意識の高まりとともに、健康的に暮らせる都市環境が求められている。本書で紹介する手法は、まちづくりや健康づくりに携わる自治体や民間事業者、地域の魅力向上や課題解決を担う地域団体などに活用されることを想定している。本書が、身体活動を促す健康的な都市環境の実現に寄与することを祈念する。

さいごに、このデザインガイドはJSPS 科研費「都市の歩行促進要因を踏まえた健康まちづくり支援ツールの開発」(18H01602)の成果のひとつである。ここに記して謝意を表する。


推薦文

都市の多様性とイノベーションの源泉となるウォーカブルなまちづくりの重要性が都市計画分野でも広く認識されるようになった。このデザインガイドでは、学術研究などのエビデンスに基づいてウォーカビリティの要素をキーワードに分解し、それぞれを平易な言葉と図・写真を用いて分かりやすく解説している。ケース・スタディの7事例はいずれも先進的で、キーワードと関連付けて紹介されているのでポイントが理解しやすい。ウォーカブルなまちづくりに従事する自治体、民間事業者、そして関心のある地域住民に広く推薦したい。
浅見泰司
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授
国土交通省「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」では、座長として「”居心地が良く歩きたくなるまちなか” からはじまる都市の再生」を提言した(2019年)。


ウォーカビリティと身体活動や健康との関連が世界中で報告されている。このデザインガイドでは工学や医学領域の研究や知見をもとにウォーカビリティを高めるキーワードを整理している。これらは建築や都市、公共交通などの分野と健康科学や医学分野という従来は交わることが少なかった異なる科学分野の融合による重要な知見の蓄積といえる。健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025(日本健康会議2025)で挙げられているように、生活していく中で健康でいられる環境整備を推進するため、地域団体や自治体、健康に関わる企業に広く推薦したい。

近藤克則
千葉大学予防医学センター教授
国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長
健康長寿社会をめざした予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした日本老年学的評価研究を立ち上げ、2010年から現在までに全国の30~64市町村の協力を経て、延べ約75万人の調査を実施した。


執筆者

樋野 公宏 / Kimihiro HINO
東京大学大学院工学系研究科 准教授

石井 儀光 / Norimitsu ISHI
国土交通省国土技術政策総合研究所都市研究部 室長

野原 卓 / Taku NOHARA
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院都市イノベーション部門 准教授

花里 真道 / Masamichi HANAZATO
千葉大学予防医学センター/デザインリサーチインスティテュート 准教授

吉田 紘明 / Hiroaki YOSHIDA
千葉大学予防医学センター 特任助教


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