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 交通安全性が高く安心して歩ける道路では、子供が遊んだり、大人が散歩などの運動を楽んだりすることができます*¹。需要を踏まえた車線数の削減、ハンプや狭さく、交通規制など、自動車流入の抑制策により、歩行者と自動車の共存を目指します。近年は自転車と歩行者の事故が増加しており、安全で快適な自転車の通行空間の充実も望まれます。
 また、防護柵や段差など歩行の障害を減らすことで高齢者も転倒リスクが低減されて歩きやすく、道路空間を活用したイベントも行いやすくなります。物的な対策に加えて、歩行者優先という意識を自動車や自転車の利用者にも浸透させることも重要です*²。

スムース横断歩道(横浜市緑区中山、出典:国⼟技術政策総合研究所):歩道の高さに揃えて横断しやすく自動車からも視認しやすい横断歩道。1か月間の実証実験を経て、速度超過や急ブレーキが多発する生活道路に設置
ボンエルフを示す標識(Hamburg, ドイツ):各種の交通静穏化手法を適用して、歩車の共存を目指す生活道路
Bennelong Bridge(Sydney, 豪州):民間資金のみで建設された全長330mの橋。歩行者と自転車の他はバスのみが通行できる。オリンピック公園の遊歩道ネットワークに接続
エキシビション・ロード(ロンドン):博物館や大学など多数の文化施設が並ぶ通りは、従前の車道部分を大幅に減らして、自動車、自転車、歩行者が共存する「シェアド・スペース(Shared Space)」に改修された
スーパーブロック・プロジェクト(バルセロナ):基盤目状になった街区9つをひとつの単位として、内部の道路を歩行者と自転車のための空間に変えていく取組み。ポブレノウ地区では、交差点の一部にこどもの遊び場(上)が設置されたり、大道芸が行われたりしている(中)。サンアントニ地区では、ストリートファニチュアが設置されて人々の憩いの場となっている(下)
生活道路対策エリア、ゾーン30など (出典: 国⼟交通省

コラム

交通安全性の高い地域の住民はよく歩く
 歩行者専用道路が多い地域、立体交差や三叉路の割合が高い地域の住民は歩数の多い傾向がありました。こうした歩行者の安全性に配慮した住宅地デザインは、いわゆるニュータウンなどの計画的住宅地に多く見られます*⁴
左:港北ニュータウンの歩行者専用道路、右:計画的住宅地には歩行者専用道路が多い

参考文献

*1 Li, F., Fisher, K. J., Brownson, R. C., & Bosworth, M. (2005). Multilevel modelling of built environment characteristics related to neighbourhood walking activity in older adults. Journal of Epidemiology & Community Health, 59(7), 558-564.
*2 国⼟交通省.(2020).「2040、道路の景色が変わる ~人々の幸せにつながる道路~」.
*3 国⼟交通省.「論点2道路空間を柔軟に使い分ける考え方とその構造・運用のあり方【歩道・路肩のリ・デザイン】」.https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/diverse_needs/pdf02/03.pdf,(参照2021-12-27)
*4 森田洋史, 樋野公宏, 山田育穂, 薄井宏行, 野原卓, & 浅見泰司. (2022). 近隣住環境と中高齢者の歩数との関係—交通安全性の観点から街路構成に着目して—. 日本建築学会計画系論文集, 87(791), 133-139.