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 小型の電動車椅子やセグウェイ、電動キックボードなど、様々なパーソナルモビリティビークル(PMV)を活用することで、これまで移動できなかった範囲を移動できるようになります。それにより、まちなかを回遊したり、遠くの目的地に移動することが可能となり、活動量の増加が期待されます。また、路線バスの廃止で最寄りバス停までの距離が遠くなってしまった場合には、PMVからバス停への乗り継ぎが円滑にできるような場づくりも重要です。また、駅前空間でも電車・バスへの乗り換えを円滑にするために、多様なPMVと歩行者が共存できる場づくりが重要です。

電動キックボード(英国ロンドン市):手軽な移動手段として利用が拡大し、シェアサービスも普及が進んでいる
駅前に整備されているシェアサイクル(英国ブリストル市)
こま武蔵台団地でのグリスロ実証実験(日高市):高低差が大きく公共交通が不便な団地内にグリスロを導入することによる効果と課題を検証するための実証実験が行われた
グリーンスローモビリティ(グリスロ)を利用する様子(撮影:木我圭輔氏)  
グリスロの時刻表 (出典: 国土技術政策総合研究所
IKEBUS(池袋のグリスロ)
IKEBUSのルート (出典: 豊島区

コラム

遅い交通(スローモビリティツール)を活かす
 遅い交通とは自動車や電車(速い交通)に比べ短い距離をゆっくり移動する交通手段のことで、セグウェイや電動キックボード、グリスロ、スマートスクーター、オンデマンドバス、などの活用・社会実験が近年増えてきています。遅い交通は、移動そのものを目的とする速い交通よりも滞留や交流などの活動が促される可能性を持ち、速い交通と共存していくことで街路空間がより豊かになる可能性があります。地理的に歩行が困難な地域において、目的施設やバスの停留所及び鉄道駅までのラストワンマイルの移動を遅い交通が担うことにより、地域住民の行動範囲を広げられる可能性が報告されています。

コラム

遅い交通(スローモビリティツール)を活かす
 千葉県松戸市の河原塚南山地区において、電動カートであるグリスロの導入による効果検証を、国土交通省の実証実験として実施しました。ドライバーの確保、運行ルートの検討などを地域住民と進めるために地域の自治会と連携しました。これらの活動の推進が期待できる自治会の絞り込みにより、対象地が選定されました。グリスロ導入前の8日間と導入中の8日間の合計16日間、60歳以上の約50名の地域住民にGPSデバイスの装着をお願いしました。グリスロ導入前、導入中での行動範囲を対象者ごとに算出した結果、グリスロ導入中の行動範囲が導入前と比べ、拡がっていることが観察されました。グリスロのような新たなモビリティを活用することにより地域住民の行動範囲を広げられる可能性が示唆されました。ドライバーの確保や運行ルートの検討などを実行できる自治会がこの地域に存在したことが、今回の実証実験を成立させたといえます。こうした地域力はソーシャル・キャピタルの一部であると考えられ、外出行動の誘発という地域課題の解決に繋がる可能性があります。
左:グリスロ運行風景、右:グリスロ導入期間の人の動き

参考文献

*1 国土技術政策総合研究所. 「ポストコロナに向けて再注目されている郊外住宅市街地において、移動しやすさ向上のための実証実験を行います」. http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/kisya2021031101.pdf, (参照2021-12-23)
*2 豊島区. 「 IKEBUSで池袋の街をゆっくり回る」. https://www.city.toshima.lg.jp/toshimanow/new/ikebus.html, (参照2021-12-23)
*3 国土交通省.「第2回バリアフリーMaaS検討会資料羽田空港における自動運転車いす導入」.https://www.mlit.go.jp/common/001375603.pdf,(参照2021-12-23)