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 運動などで公園を利用することはもちろん健康上有益ですが、身近に街路樹、庭などの緑が存在することにも、ストレス軽減効果があります*¹。大規模な緑地だけでなく、こうした身近な緑を保全・創出することも重要です。
 また「半農半X」に代表されるように、ライフスタイルに農的活動を組み入れる人が増えています。市民農園や体験農園に参加することで、身体活動が増加し、主観的健康感や精神的健康が向上します*²。近年では、担い手不足などで減少する都市農地を保全する手段としても市民農園が着目され、農地の貸し借りを促進する新しい制度も生まれています。

体験農園や市民農園の参加者は、非参加者と比べて、主観的健康感と精神的健康が有意に改善していた。特に体験農園の参加者の改善は、身体活動の増加だけでなく、参加者間の交流を通じた社会的健康の向上によることが示唆された*³
自治体等が農家から借りた農地の区画を貸し出す市民農園(八王子市)
農家が市民に指導しながら農業体験の機会を提供する体験農園(西東京市)
農地や里山、屋敷林等の農的土地利用と住宅地が一体となった「緑農住」空間の機能として心と身体の健康が挙げられ、その保全・活用と新たな価値の創出が目指されている(出典:東京都)*⁴
屋敷林で活動する近隣住民(西東京市):近隣住民が集まって屋敷林管理のボランティア活動や、体操、音楽などのコミュニティ活動を実施
森林セラピー(高知県梼原町):町面積の91%を森林が占める梼原町では、地域住民や医療機関が協力して、セラピーロードの散策、地元食材による食事の提供、医師による健康アドバイスなどを実施。血圧や血糖の低下、免疫機能の向上などの効果が見られた

コラム

緑地が多い地域に暮らす高齢者はうつが10%少ない
 日本の高齢者126,878人を対象に、うつ症状の少なさと緑地の多さの関係を調査しました*⁵。衛星写真を元に作成された緑地データを用いました。その結果、緑地(樹木、草地、田畑)が多い地域に居住する高齢者は、少ない地域に比べうつ症状が約10%少ないことが明らかになりました。都市部と非都市部を分けて分析すると、都市部においては樹木が少ない地域に比べて、多い地域に居住する高齢者はうつ症状が約6%少ないこと、非都市においては草地が中程度の地域は、少ない地域に比べて高齢者のうつ症状が約9%少ないことが明らかになりました。このことから、緑地が多い地域に暮らす高齢者は、うつが少ない可能性が示唆されました。また、都市と非都市では、高齢者のうつの少なさに関わる緑地の種類に違いがあることも示されました。地域特性に応じた緑地を活かした健康まちづくりの推進が期待されます。
地域別の緑地の多さと高齢者がうつと判定される確率

参考文献

*1 Daniel T.C.C., Danielle F.S., Hannah L.H., Kate E.P., Gavin M.S., Richard A.F., ..., & Kevin J.G., (2017) Doses of Neighborhood Nature: The Benefits for Mental Health of Living with Nature, BioScience, Volume 67, Issue 2, February, Pages 147‒155
*2 Soga, M., Cox, D. T., Yamaura, Y., Gaston, K. J., Kurisu, K., & Hanaki, K. (2017). Health benefits of urban allotment gardening: Improved physical and psychological well-being and social integration. International journal of environmental research and public health, 14(1), 71.
*3 Harada, K., Hino, K., Iida, A., Yamazaki, T., Usui, H., Asami, Y., & Yokohari, M. (2021). How Does Urban Farming Benefit Participantsʼ Health? A Case Study of Allotments and Experience Farms in Tokyo. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(2), 542.
*4 東京都(東京大学新しい「緑農住」まちづくり研究グループ監修).(2022)『「緑農住」まちづくりガイドライン』
*5 Nishigaki, M., Hanazato, M., Koga, C., & Kondo, K. (2020). What Types of Greenspaces Are Associated with Depression in Urban and Rural Older Adults?: A Multilevel Cross-Sectional Study from JAGES. International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(24), 9276.