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 都市部において、みどり豊かな公園や水辺空間は運動やレクリエーションの場として重要な役割を果たしています。しかしながら、気候変動や都市活動等によって生物多様性が失われることが危惧されており、SDGsにも生物多様性の保護が掲げられています。まちづくりにおいてもSEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)*¹のように企業等によって創出された良好な緑地や保護活動等を評価する取り組みが行われています。シドニー都心の西方5,6kmに位置するThe GreenWayは、旧貨物線を活用した長さ5.8kmの緑の回廊です。徒歩、自転車、軽量軌道の利用促進、ボランティアおよび専門家による緑地管理を通じた生物多様性の保全が目指されています。

The GreenWay (出典: Inner West Council*²)
シドニー西部の歩行者自転車道「The GreenWay」
ナショナルトラストが管理している緑道(英国コッツウォルズ)

コラム

生物多様性が高い地域で精神的健康が良い傾向
 ドイツ全土の3万人の成人を対象として、健康状態と居住地域の生物多様性を評価した研究が報告されました*³。個人属性のほか、人口密度、公園の近接性、自然保護の度合い、景観の特異性、気温など、複数の地域環境の条件を統計学的に揃えた分析の結果、植物の多様性と鳥類の多様性が高まる地域に居住する人ほど、精神的健康が高い傾向が観察されました。これまでの研究で、自然環境に身を置くと人工的なストレスが緩和される影響がある(注意回復理論)と考えられています。生物多様性が高い地域の豊かな自然環境もこうした経路で、私たちの心の健康によい働きをする可能性が示唆されています。

参考文献

*1 都市緑化機構.「SEGESの概要」.https://seges.jp/outline.html,(参照2021-12-23)
*2 Inner West Council. GreenWay Masterplan. https://www.innerwest.nsw.gov.au/live/environment-and-sustainability/in-your-neighbourhood/bushland-parks-and-verges/greenway/greenway-masterplan, (参照2021-12-23)
*3 Methorst, J., Bonn, A., Marselle, M., Böhning-Gaese, K., & Rehdanz, K. (2021). Species richness is positively related to mental health–a study for Germany. Landscape and Urban Planning, 211, 104084.