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 落書きや破壊行為などのバンダリズムが行われる地域では、住民の犯罪不安が高く、身体活動量が低いとされています*¹。割れ窓理論(→コラム)に基づくと、こうした状況は放置されると悪化し、地域の荒廃をも招いてしまいます。日々の美化活動により地域の領域性を高めることで、秩序違反行為を抑止し、住民の安心感を向上させることができます。
 さらに、花と緑に彩られた美しい歩行環境は、住民の身体活動を高めることも分かっています*²。

地域住民による美化活動(沖縄県北中城村):北中城村大城地区では、高齢男性で構成される「大城花咲爺会」が、月に2 回、県道沿い約1km の花壇や小公園の清掃、除草、花壇の手入れなどを行っている。この活動で美化された県道は、日常的に散歩する住民が増え、日本ウォーキング協会の「日本の歩きたくなる道500 選」に選ばれた。活動後にはゆんたく(おしゃべり)が始まり、高齢男性の引きこもり防止や、生きがいづくりとしても評価される
近隣の自然景観などの美観が優れていると、身体に障害のない人は身体活動が多い*²

コラム

割れ窓理論(Broken window theory)とは?
 軽微な秩序違反であっても、放置されればより深刻な犯罪、さらには地域の荒廃につながるとする環境犯罪学理論。米国の犯罪学者ジョージ・ケリングにより提唱された*³。公共の場所での軽犯罪を徹底的に取り締まるニューヨーク市の不寛容 (Zero tolerance)政策や、「美しいまちは、安全なまち」を理念に掲げる東京都足立区の「ビューティフル・ウィンドウズ運動」(上写真) などに応用されている。

参考文献

*1 Mason, P., Kearns, A., & Livingston, M. (2013). “Safe Going”: The influence of crime rates and perceived crime and safety on walking in deprived neighbourhoods. Social Science and Medicine, 91, 15-24.
*2 Carlson, J. A., Sallis, J. F., Conway, T. L., Saelens, B. E., Frank, L. D., Kerr, J., …& King, A. C. (2012). Interactions between psychosocial and built environment factors in explaining older adults’ physical activity. Preventive Medicine, 54(1), 68-73.
*3 Kelling, G. L., & Wilson, J. Q. (1982). Broken windows. Atlantic monthly, 249(3), 29-38.