都市や地域に存在する緑地、水辺、地形(傾斜)といった自然環境が、人々の健康や行動にどのように関係するかを検討しています。これまでに、高齢者の抑うつ、慢性疼痛、フレイル、認知機能、身体活動などとの関連を、地理情報を活用して分析してきました。都市・地域環境の質の向上を通じた健康維持・増進の可能性を明らかにすることを目的としています。
詳細
緑地の量や種類が抑うつと関連すること、その関連が都市部と農村部で異なる可能性を報告しています(Nishigaki et al., 2020)。また、景観の質や近隣環境の美観といった主観的評価が、脳構造や認知機能と関連することを示し、自然環境が心理的評価を介して認知機能と結びつく可能性も示唆されました(Tani et al., 2023)。
地域の地形、特に傾斜について、高齢者の健康や機能状態との関係に着目しています。傾斜のある居住環境が糖尿病のコントロールと関連することを示しました(Fujiwara et al., 2017)。また、地域の傾斜が高齢者のフレイルと関連する可能性も報告しました(Mori et al. 2021)。地形が身体機能や虚弱性の分布に関与することが示唆されています。傾斜は移動負担となり得る一方で、日常的な身体負荷や活動量と関係する環境要素として位置づけられます。
また、都市開発地域における親水空間や大規模公園等の自然環境が、瞬間的なウェルビーイングに関わることをスマートフォンを用いた経験サンプリング法にて研究で明らかにしました(Chen et al. 2025)。
水辺への近接性や視認性が、精神的健康、身体活動、回復感と関連することが報告されており、緑地研究で蓄積されてきた知見と並行して、水辺環境の健康影響を検討しています。日本の都市・地域文脈における水辺環境の役割を、緑地や地形との比較の中で整理することを重視しています。
都市・空間デザインへの視座
緑地、水辺、傾斜といった自然環境を、健康都市・空間デザインに組み込むための基礎的なエビデンスを提供します。自然環境を一律に整地・均質化するのではなく、傾斜や水辺といった地形・地理特性を前提とした地域の評価が重要と考えられます。傾斜や水辺は、身体的負荷や安全性への配慮が求められる一方で、眺望や快適性、回復感といった心理的価値も併せ持つ環境要素です。利用者属性や目的に応じて、リスクと価値の両面を踏まえた設計が、健康を考慮した都市・空間デザインにおいて重要になると考えています。