健康長寿社会の実現と社会保障の持続可能性の確保に向けて、国や自治体、個人が負担する介護費用の適正化が求められています。近隣の生鮮食料品店、公園や歩道など8種類の地域環境と介護費用との関連について、国内7市町の34,982人の高齢者を2010年から約9年間追跡したデータを分析しました。
その結果、生鮮食料品店が近くにある者は、介護費用がひとり当たり月1,367円低いことがわかりました。高齢者1万人が生鮮食料品店の近くに住むことで介護費用が年間約1.6億円抑制できる計算になります。そのほか、夜の一人歩きが危ない場所がある者は介護費用が低く、気軽に立ち寄ることのできる家や施設がある者は介護費用が高いといった予想に反した知見がありました。
夜歩くのが危ない場所が多い地域には駅周辺が多く含まれていたため、生活の利便性の高さが介護費用の低さに繋がった可能性があります。また、気軽に立ち寄れる家や施設については、過去の先行研究で飲食店の近くに住むことと肥満が関連する結果から、介護費用の高さに繋がった可能性があります。
引き続き、地域の特性を詳細に分析し介護費用に影響を与える要因の解明を進め、「自然に健康になれる環境づくり」に向けた研究を推進していきます。